山行報告 沢登り 6月の大日沢・10月の沢上谷 (クリックでジャンプします) |
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沢登り山行報告 (文責:八十嶋) 今年、沢登りを支部の行事として取り入れることができたのは、 なんと言っても田井さんの多大な尽力と豊かな沢登経験があってのことです。 飄々としながらも、笑顔で私たちを引っ張ってくれた田井さんに、 まずこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。 また、そもそもの発案をしてくださった前川さんにも感謝したいと思います。 これからも、わくわくすることを始められる、続けられる山岳会を目指してがんばっていきたいです。 |
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◆沢登り第一回 2016年6月11日 晴れ 加賀市山中真砂~大日沢遡行~大日山(1368m) 参加者:田井(L) 中川 前川 藤江 八十嶋 大日沢は、加賀・小松にまたがる大日山の西側の深い谷に流れる沢。 私にとっては初めての沢登りとなるため不安も多かったが、調べた範囲では登攀に関してはそれほど難しくもなさそうであるし、泳ぐ必要もなさそうだった(個人的には泳ぎは大好きだが)。 何より、何十年も前からこのコースを歩いているリーダーの田井さんから薦められたことも有り、不安以上に期待が大きかった。 ウェアや荷物の防水用品などをうきうきと揃え、いよいよ待ちに待った本番に臨んだ。 朝8時ごろ、真砂の集落跡に5人で車を停める。緑が美しく繁茂した季節、良く晴れた空。沢を歩くにはうってつけの日だった。 はじめは一般登山道と同じく、沢沿いの道を進む。沢に入るのは堰堤を越えてからだ。 東向きに歩くこのコースでは、午前中は木々の梢を縫って逆光に陽が差しこみ、ずっと水面がきらきらと輝いて見えた。 今から、あの流れの中を行くと思うと、どうしようもなくわくわくさせられる。 沢に入ると、身が締まるような水の冷たさ。大日沢は水量が多く、大きな岩がごろごろしていて、水の表情は変化に富んでいる。 深い緑色の淵と白糸のように走る流れが同時に目を楽しませてくれ、入渓してすぐに「来て良かった」と思わされる。 頭上に光をすかして輝く緑、足元にさわやかな清流を感じながら、メンバーが次々と、岩から岩へと軽快に飛び移っていくのを見るのはなんとも言えず気持ちがいい。 幅が広くなっている淵は水の流れが緩やかで、思わず泳いでみたくなった。 どうしても欲望に抗えず必要もなく泳いでみたところ、せいぜい10秒泳いだだけでも芯まで冷えそうになる。 なんといっても一番の醍醐味は、滝。大日沢は大小さまざま、落差や水量などの表情も豊かな滝が次々と現れ、目を楽しませてくれるる どの滝も高巻きしてやりすごすことはできるが、リーダーの田井さんがにこにことしながら「やっぱり少しはシャワークライミングも楽しまないと」と一言。私としては待ってました!といいたい気持ちだった。 初めての滝の登攀だが、手がかり・足がかりがしっかりとしているため難しくは無かった。 ただ、水とコケでどうしても滑りやすく、決して油断はできない。手を、足を動かすたびに慎重にホールドを確かめる。 その間にも滝の飛沫が絶えず降りかかり、冷たい反面なんとも爽快だった。 10mほどの落差の滝をひとつ越えるだけで「これはいいな・・・」と思わされる。 ただ、こういうときほど調子に乗ってはいけないという戒めも忘れないようにしたい。 後続のメンバーのためにフィックスロープを張ったが、水にぬれたロープを全然上手く投げられず、挙句の果てに木に引っかかる始末。何回もやり直してしまった。(皆さん、痺れを切らさず待ってくださってありがとうございました。) 基本的に田井さんがトップを歩いてくれたものの、私もたまに先頭を歩いてみるた。 すると実感するのが、歩きやすい場所を見つけるのが沢は特に難しいということだ。 安定した岩はどれか、流れが急な場所を避けるにはどこを通ればいいか、考えながら歩くのは集中力がいる。 その代わり、先頭を歩く楽しみもある。人が歩くのに驚いて、沢の中に時折さっと魚影が走るのだ。 「岩魚」とはよく言ったもので、こんな狭い岩の間をよくぞと驚かされるほど、機敏に岩と岩の隙間を縫って泳ぎ、巧みに淵に潜む。イワナのほかにも、急流の中必死に岩にしがみついて生きるナガレヒキガエルの子もなんともかわいらしい。沢の世界は新鮮な発見に満ちている。 滝をいくつか乗り越え、あるいは高巻きしてやり過ごしながら進むうち、いくつかの支流に出くわす。 大日山頂上直下の鞍部に出るためには、本流と思われる大きな流れをたどるばかりでなく、途中で支流と思われる左俣の沢に入らなければならない。これが難しい。 見晴らしが全く無いため、滝の数や沢筋の方角がルート判断の頼みとなる。 田井さんに助けてもらい、左俣に入ることはできたが、すると目の前にあるのはほとんど「壁」としか言いようのない巨大な崖だった。「まさかここは行かないだろう」と思いながら、細かい分岐をいくつか選んで支流をさかのぼるうち、とうとう少し行く先を間違えてしまった。 どうやら「まさか」の壁を左側に迂回しすぎたらしい。 道なき道を沢筋だけを頼りにすすむ。時にはぼろぼろと崩れそうになる岩に慎重に手がかりを求め、時に潅木を握り締めて登る。最後の15分は藪こぎだったが、何とか山頂近くで尾根に合流できた。 これもまた沢登りの醍醐味だろう。面白さ、厳しさを噛み締めることのできるいい山行。田井さんが笑顔で繰り返していた「ここは沢登りの入門編だよ」という言葉がなんとも味わい深かった。 久しぶりに大日山の山頂を踏み、仲間たちと昼食を楽しむ。全てにおいて心の底から楽しめた、すばらしい沢登りデビューとなった。 |
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◆沢登り第二回 2016年10月22日 曇り 岐阜県高山市上宝町 沢上谷(そうれだに)遡行 参加者:田井(L) 前川 藤江 八十嶋 夏に行くはずだった赤木沢が、メンバーの都合が合わず流れてしまい久しぶりの沢登りとなった。 ただ、沢上谷はインターネットなどで調べても初級者向きでなお絶景が楽しめる沢登りコースとのこと。 否が応にも期待は高まる。地形図を見る限り、傾斜も全体的に優しく、ゆっくり時間をかけても半日かからないであろう行程と思えた。これなら気楽に楽しめそうだ。 朝8時前に入渓点近くの駐車場に着く。このコースは、ありがたいことに沢沿いに車道が通っているため、ゴール地点近くにも車を置いておける。 そのため、まず車の一部をゴール地点にデポする作業を行った。その間に、何台か他のパーティーの車もやってくる。 車のナンバーは東京など関東地方のものばかり。中には小さな子供をつれて、入渓地点近くで水遊びをするという親子もいた。 かなり人気の沢なのは間違いない。 準備が終わると早速、沢に降りた。紅葉には少し早いが、空気は凛と冷えていて秋の気配は十分。 水は思ったほど冷たくは無い。水温は気温ほどめまぐるしく変化しないので、秋がまだ浸透しきっていないと見えた。 沢上谷は水量はそこそこだが、広々とした沢筋で、流れが急な箇所が少ないため比較的安心して歩ける。 特に多いのが、滑らかな岩盤の上を薄く水が覆うナメ床だ。滑りやすいものの、ごろごろした岩場に比べ転んで大怪我という緊張感がなく、気持ちよく登れる。何より柔らかな水の流れに心癒される。 それにもまして魅力なのはやはり滝。コース上、本流に何箇所か支流が流れ込んでいて、この支流を10~20分たどると見事な滝に突き当たる。 まず出会えるのが、高さ5mほどの小さな滝が目印の五郎七滝へと続く支流。 ここは滝に至るまでの道も見事で、広葉樹が枝を広げたトンネルの下に広大なナメ廊下が続く。 五郎七滝そのものは二条に分かれた白糸のような美しい滝でなんとも言えず上品な姿をしている。 五郎七滝を見た後、本流に戻りしばらく遡行を続けると、次は岩洞滝へと続く比較的大きな支流がある。 岩洞滝はまさに雄大そのもの。高さ50mほど有りそうな大きな滝が、ハングした岩棚の上から豪快に流れ出ている。 ハングした岩棚の下は滝の名のごとく洞のようになっていて、洞の中まで歩いていけば滝の裏から水飛沫越しに紅葉を眺めることができ、まさに絶景。この日は、滝の目の前にある樹齢何百年という桂の大木が黄に色づいていていた。 飛沫が飛ぶ中、滝の裏まで歩いていくのは少々寒かったが、メンバー全員言葉を呑んで景色に見とれた。 この瞬間は誰もが「来て良かった」と思うに違いない。 本流を歩いていけば、やがて出会うのが蓑谷大滝。 これも50mはあるかという見事な大滝で、すぐ下まで歩いていくことができ、見上げた時の勇壮な姿には飽く事がない。 この滝はどうあがいても登攀できそうに無いが、左岸から高巻くことでそれほど難しい思いもせずに越えることができる。 最後に、二股の滝が流れ込む滝つぼから、向かって右側のナメ滝を直登する。 登攀というほどの傾斜ではなく、滝沿いの草木をつかめば問題なく登れるが、滑りやすい。 私は勇んで先頭を行かせてもらったが、ずるりと滑って一歩進み、またずるりと滑っては登る姿はかなり格好悪かったことと思う。 一応ここはフィックスロープを張ったが、例によってロープ投げが下手な私の投げるロープは木に引っかかった。(そろそろ皆さんの視線も痛かったです) 沢にかかる橋につきあたったらゴール。 沢上谷はまさに初級者向けの歩きやすさだった上、絶景ポイントも多く、ローリスクハイリターンな沢登りを楽しめた。 ナメ床で、田井さん以外のメンバーは一度は滑って転んだが(そして大なり小なりドボンしてしまったが)、それもご愛嬌。談笑の絶えない楽しい沢登りだった。 |
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