(公益事業)自然観察会

                 ・実施日 平成27年7月4日(土)
                 ・場所  蟹淵(ガンブチ)(能美市鍋谷地区)
                 ・参加者 (会員)安田CL、岡本、谷路、樽矢、前川、埴崎、
        (一般)クリスラウ(谷路知人)、樽矢久美子(樽矢夫人)、前川文平(前川孫小2)
 
   
  梅雨季特有の沈鬱な空模様の中、午前9時に全員集合。
 安田リーダーの紹介に続き全員の個人紹介で、安田・岡本車に分乗して鍋谷林道の待避所(5~6台駐車可)に入る。
 途次の田園風景の変転に谷路会員の案内に、日本の古文書の研究に研さんを積むクリスさんが一々頷いている。
 全員ゴム長着用でクマ出没注意の看板から右折で車道を辿る。RV車なら到達可能の転回場より本格的な山道に入る。
 山裾はアテ(アスナロの変種=ヒノキアスナロの方言)の植林地、アテは石川県の木(s41指定)で
 加賀はアテ、ヒバ。能登はアテ、ボヤクサマキ、ヒバと呼び、元々は県内に広く自生していた。
 珠洲宝立山の自生林が知られる。高木になるが光の入りずらい林内で下枝から根を発して増殖する珍しい性質。
 ノリウツギ(糊空木)の白の花が林内で際立つ。この木は高さ2~4mで枝先に円錐花序と装飾花をつける。
 ミヤマイラクサ(深山刺草)は春季葉が完全に開く前の若い茎は山菜として重用される。
 故力丸会員の山中サバイバルに対応する食用植物の知識を蓄える話が懐古される。
 沢筋を上るが崩落が所々有り慎重に歩を運ばせる。忽然として眼前に蟹淵が開ける。
 NHKの過去の紹介番組で「淵」と名付けた由来探索があったが河流の一部と言うよりも将に「池」と表現できる。
 標高268m、周囲300m、水深6、7mの佇まいは、お化け白大蟹の伝説を彷彿させる神秘的な光景である。
 
    
日によって色が変わるそうです、本日は静かなミドリ色
   上部より数本の沢が流入しているが、淵上端の沢からは土砂の崩壊の流入が続き、淵の自然埋め立てが進み、
 放置すれば全体の埋没が危惧され、改良着手に46人とされる入会地権者の全体合意が取れず、
 関係者はヤキモキしている。
 湖面を右回りで一周する。低い標高地で有りながら、ここは本来亜高山帯に生息する植生と昆虫の特異生態が
 観測される貴重なポイントである。代表は市の天然記念物指定で絶滅危惧種のルリイトトンボであり、
 「空飛ぶ宝石」の形容の通り青色の小さな姿が水面に映えて見られる。
 捕虫網でとらえたルリイトに前川会員のお孫さんは感心して見とれる。
 交尾状態でのハート型のオスメスは幻想的で雰囲気がある。酸性・水温・標高の三要素が相まっての、
 この淵の特徴はルリイトが代表するトンボで10種が居りオオルリボシヤンマも見られる。
 
    
空飛ぶ宝石! 宝石には縁がありませんが・・・        入口のかんばんの♥
 水面はヒツジグサ(羊草)が一面に地下茎から葉と花を一つずつ浮かべる様子が見られる。
 尾瀬などの亜高山帯湿原植生なのだが、日本古来の生育種で、未の刻(午後2時)頃に花を咲かせるとのことからの
 命名だが、ほぼ日中を通して開花している。
 脇ではカンガレイ(イグサに似たホタルイ属)が水中から60cm程度で葉が発達せず、茎のみからなる植物。
 茎の先端ら少し下に4~20個の花序が頭状についている。コバルトブルーの淵を一周する。
 モリアオガエルの産卵最盛期で、いたるところで水面に接して卵塊が垂れ下がっている。
 卵魂は手に取るとブヨブヨしたゼリー状で柔らかな感蝕。
 安田会員のモリアオガエルの産卵期のオス・メスの行動描写が恰も目の前で展開されているように聞き取れる。
 林道に戻ると林間にカケスかヤマガラかシジュウカラか不詳だが「ジエージエー」「スイースイー」「ビービー」の
 鳴き声が響き、サンコウチョウ(三光鳥)と話題になる。
 サンコウチョウは夏鳥で飛来し、繁殖期(初夏)のオスは目とクチバシの周りが明るい水色で長い尾は体長の三倍あり、
 スギやヒノキに営巣し、地鳴きは「ギィギィ」さえずりは「ツキー(月)、ヒー(日)、ホシー(星)、ホイホイホイ」
 で三光鳥と名付けたようである。
 日に二度の案内出動もあって、何とか飛翔の素晴らしい姿が見たいとは安田会員の述懐。
 ほかにアカチョウビンは燃えるような赤のクチバシと体全体がやや赤い色で覆われていることから「火の鳥」の別名。
 夏鳥で飛来し、体長27cm前後、翼を広げると40cmで飛ぶ姿は水色の鮮やとのことで、
 カエル、サワガニが生息するこの地に多く見られ、「キョロロロロ」と鳴く。
 帰路には鍋谷鎮守の八幡神社に立ち寄る。水護りの神として、1100年来の歴史を刻む社殿にクリスさんは
 石段を登って学びの成就と滞在の安全を祈願していたようだ。
 こくぞう交流館に戻り、館内の手造りのテーブルと椅子で早めの昼食を取り、
 クリスさんからは貴重な里山体験に感激とのお礼があり、安田会員の絶妙の解説に感謝し、前川会員の締めで終了した。
 
                                   (記録 埴崎会員 写真 樽矢 導章)
   
モリアオガエルの卵塊                案内・解説ありがとうございました
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