山行報告 秋山山行 黒部下の廊下 平成30年10月20・21日  
黒部 下の廊下
日 時 : 2018.10.20_21
ルート :宇奈月~欅平~阿曽原~黒四ダム
メンバー:中川 池本 藤井あゆみ、安田
欅平駅標高700mから黒部ダム駅1433m、標高差743m・歩行距離≒29kmを歩く「下の廊下」。
燃えるような山の彩りを期待し、秋山山行参加に手を挙げた。会員諸兄にも一度は足を踏み入れた方が多いのではないだろうか。
入山に際しよく言われるのが、この道では怪我人は出ない、落ちれば死にます!18・20日と続けて墜落事故が発生したが、1人は仙人から小屋終いの下山中で、雨に足を取られ転落した。一つ気を抜けば、場数を踏んだベテランでもその難を免れない。

 1日目 (10/20) 欅平から阿曽原温泉小屋
金沢05:30出発、07:20宇奈月温泉駅前で扇沢への回送業者に車を渡す。07:57発のトロッコ列車に乗車、欅平駅09:12着。
09:25ヘルメットを頭に阿曽原を目指し歩き出す。いきなりの急坂、標高差200mを登り水平道へと向かう前に、毛勝三山を望む展望台へ。曇天で山はガスって見えないが、方向を確かめ、山影を重ねる。
「水平道始・終点 ←阿曽原温泉10.3km 1.3km欅平駅→」の表示看板を目に足を進める。
対岸には奥鐘山の岩壁が眺められ、身を圧する景観だ。平成19年6月23・24日に、会の出湯山行で仲間10人と祖母谷温泉から奥鐘山山頂に登ったのを思い出す。
12:25「志合谷 ←阿曽原温泉6.8km 4.8km欅平駅→」トンネルを前にヘッドランプ着装、中は水浸し壁は湿気でかび臭い。抜けると断崖の道が続く。
大太鼓に差し掛かかり高度感のある崖下を覗くと、一瞬臍下がジィーンとして思わず壁面に敷設されている番線に手が行く。
転落防止に、総延長の8割近くに敷設された番線は、少しでも恐怖感を持った人には命綱ともいえるものだ。
一度手にすると、その針金に頼る自分がいる。若い時のバランス感覚はもう無い!オリオの大滝を過ぎ1時間程も歩いたか、樹林の陰にテントが見えた。
テントが見えてからしこたま歩くのはどこの山も同じ、小屋の右手黒部ダム方面から下って来た登山者(この道を歩く人を何と呼べばいいのだろう?体力勝負でピークの無い山岳路、登山ではない。)が見える。
明日はあの道を登るのだ。16:05阿曽原温泉小屋に着いた。
部屋割りは一畳に二人の雑魚寝と思って貰えれば良い。風呂は5時から男、6時から女。風呂に入るのも大変だ、露天風呂まで片道5分は掛かる。
芋の子洗いの様相も、もたもたしていると女性軍に追立を食らう。
しかし湯は良い、高熱隧道から引いた湯だ!湯上りに持参の酒を少々、夕食は御代わり自由のカレーライスだが、すきっ腹を差し引いても美味かった。5時出と決め、早めに寝に着く。 
1日目 歩行時間6時間半

 2日目(10/21)阿曽原温泉小屋から黒部ダム駅
05:30小屋を出る。06:35関電人見宿舎から仙人ダムの上を通り、07:20東谷吊橋を渡る。
Fさん、全行程の中でこの揺れが一番怖かったと後で語る。
07:30熱量補給に小屋弁当を食べるが、冷たく米は固くポロポロで味噌汁に浸しての猫まんま。
Yさん、美味かったが山の中でなかったら絶対に食べないとは、同感である。
腹もおさまり、昨日とは打って変わった青空。朝日に映え錦秋に染まる山肌を目にし、いよいよこのコースの核心部である旧日電歩道「下の廊下」に入る。
Nさん愛用のカメラの出番だ、感動的出逢いシーンごとにファインダーに目をやりシャッターを押す。
短いトンネルをくぐると、目の前に広がるV字谷の渓谷が続く。先ず目にするのは、深い切れ込みの最深部を、飛沫を立て崖にぶち当たりながら走るS字峡の流れ。
高度間と迫力、私はこの景観が一番好きだ。半月峡を過ぎ、劒沢の流れに掛かる吊橋から十字峡を見下ろす。
Nリーダー、吊橋に立つ一人一人のガッツポーズを撮ってくれたが、足元の定まらない処でどんな顔をしていたのか見るのが楽しみだ。
渡ると広場に出る。本流に下りる道から、ヤングボーイ3人息も切らせず上がって来た、
‶凄い水量です・・″10:00ザックを下ろし、行動食を腹にし先に進む。
断崖は水面に近づき谷幅も狭くなる。
10:40交差することもままならない白竜峡に、黒四ダムからのパーティーが引きも切らずやって来る。
美しくも怖いところだ。傷み字も定かでない「白竜峡 ←黒部ダム駅9.?km 20.?km欅平駅→」の表示板(文頭の歩行距離≒29kmはこの数字を使った)。
黒部別山谷の河原には、真っ黒の塊となり雪渓が残る。梯子での高巻箇所が続く、アップダウンの繰り返しに足の疲労が溜まってくる。
つま先に石っころが当たる、靴底のすり音が耳障りだ。足が上がっていないな、言いたかないが年寄り歩きだ。
Yさんがドーピング薬だと言ってAJINOMOTOのアミノ酸顆粒状をくれた、効いたのかな⁉ 本流が足下に見える。
此処までくると見納めの紅葉に別れを告げるのが惜しい、内蔵助谷出合の橋が見えてきた。
黒四ダムの大きなコンクリート壁から噴き出る観光放水の轟!着いたぞー・・
喜びの後には最後の試練が。橋を渡ると待つのは、黒部ダム駅までの結構な坂道。
楽しみながら登る我ら4人のパーティー、待つのは関電トロリーバス。15:50ぽっかり空いた巨大なトンネルに身を入れる。
歩くのはここまで‼ 2日目歩行時間10時間20分

 扇沢にたどり着き、Fさんの愛車に乗り込む。先ずは大町で温泉入浴、疲れが湯に溶け出していく。
温まった所で大町市内のレストラン自慢の鹿肉カツで腹を満たす。
腹も心も満たされて金沢へと家路に着く。往復共にか弱き女子の細腕に運転を委ねることになり申し訳なく思います!本当にありがとうございました。

 文中の地名・施設名は昭文社「山と高原地図」参照
                         (文 池本  写真 中川)
 
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